「踊るで、しかし」は、毎月第3木曜日にニューヨークで発行される読者参加型のフリーペーパーです
2001年9月の創刊から10〜40代に絶大な人気を誇るお笑い系フリーペーパーとしてNY在住日本人に認知されています。
ライター陣は政治家、お笑い芸人から構成作家までと幅広く、イラスト入り「NY人間図鑑」はNY日本人社会を反映させていると大人気。
毎月開催するクラブイベント情報も掲載中です。

国会発信コラム

1969年から1年半、NYに滞在した松浪健四郎による激励コラム
matsunami

文:松浪健四郎(文部科学副大臣)
体大時代、全日本学生選手権優勝を経て、東ミシガン大学にスカウトされる。その後、NYアスレチッククラブ所属選手となり、全米レスリング優勝。専修大教授から1996年より衆議院議員。

「シメサバ」

  「すし屋」に入って、その板前さんの実力を識る方法には諸説が乱れる。おそらく、個人の客としての好みもあるのだろうが、私の方法は、まず、シメサバの味だ。

 だから、「すし屋」さんで注文する最初の握りはシメサバ。値段が安いこともあるが、私の好物なのである。そして、その味で板さんの実力を評価する。

 好きな味を活字で表現する能力をもたぬが、シメサバが舌に当たった時点で“OK”か“NO”となる。シメサバに関して、私はちょっとした評論家だと思っている。実は、その源流はNYC(ニューヨーク市)生活にある。

 暇をみつけては、友だちと海釣りに行った。ロングアイランドへ行き、釣り船に乗って沖へ出る。いつも私たちの釣るのはサバだった。時に大きなサバも釣れたが、たいていは30センチくらいのシロモノが多かった。

 サバ釣りには、たいした道具も技術も不要。釣り船に乗れば貸してくれる釣具で十分、しかも海水にたらしただけでサバがかかる。文字どおり「入れ食い」であった。おもしろいくらい釣れるというより、イヤになるくらい釣れたと想起する。

 そのかわり、ほとんどの人は、船酔い。釣りどころではなくなるのだが、「ゲロッ、ゲロッ」と海面に吐くと、それが餌になって、またサバが釣れた。私自身も船に弱く、いつも船に酔うくせ、また行きたくなった…。

 多分、まったく自然と接しないマンハッタンの暮らしからの逃避だったかもしれぬ。くわえて、私がオミヤゲとして持参するサバを、ものすごく喜んでくれたご夫人がいたからでもある。そのご夫人は、画家の奥さんで、私のマージャンのパートナーであられた。

 あんなにお世話になったのに、私は、あの夫婦のお名前を失念してしまった。NYCで貧しい画家生活であられたが、いつも私を激励していただいたことを忘れない。

 その奥さんこそが、シメサバづくりの名人だったのである。「塩の量が難しいの。酢でしめるかげんも難しいわっ」。こう語られていたことも耳にこびりついている。

 かくして、私はシメサバ好きになり、今日に至る。人間の食物に関する動機づけは単純だ。また、この奥さんのオムレツ風の玉子焼きも圧巻だった。

 ところで、サバ釣りから岸に戻ってくると、サバやイカを欲しがる女性たちの群れがいた。彼女たちは、ユダヤ人だと教えられた。この時、ユダヤ人は日本人と同じようにサバやイカ、タコを食する民族なのだと識った。

 昨年末、NYCで「すし屋」に入った。で、シメサバを食った。その感想は、“NO”だった。アメリカ人の板さんの握る「すし」は、どうしても私の口には合わなかった。

 もしかしたら、板さんは職人、永年、修業を積んだプロでなければ、美味しく握れないという偏見が強くあるからだろうか。案内してくれた知人は、「うまいだろッ!」と言った。

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