文:松浪健四郎(文部科学副大臣)
体大時代、全日本学生選手権優勝を経て、東ミシガン大学にスカウトされる。その後、NYアスレチッククラブ所属選手となり、全米レスリング優勝。専修大教授から1996年より衆議院議員。
ニューヨーク(NY)には、総領事館がある。私は政治家になるまで、一度も訪れることはなかった。おそらく、普通のNY滞在者である日本人の多くは行かないにちがいない。
なんとなく政府公館の敷居が高く思われるし、だいたい公館に用事などない。ただ、真面目な方は、在留届を提出するために訪問する。本当は、在留届を出しておくと、何かが起こった際、とても役立つ。
NYの総領事館のトップは、「総領事」というポストだが、一般的には「大使」と呼称される。世界中でNYだけが、「総領事」のことを「大使」と呼ぶ。
それだけNYの存在の大きさを政府が認めているのだ。また、大物が就任することでも有名である。現在の「大使」は、民間から起用されたけれど、やはり大物。
私の体験からいえば、NY滞在中の日本人の多くは反権力主義者だと思う。領事館に勤める外交官たちを権力者だと決め込んでいるため、余計に足は領事館から遠のく。
外交官たちは、エリートであるとか、権力者であるなんて考えていないのに、一般人は勝手に決めつけてしまう。もしかしたなら、ヒガミなのかもしれない。
私たちと一緒にNY暮らしを楽しんでいた一人が、国連職員になってパリに派遣されたことがあった。英語力の凄さは知っていたけれど、まさか国連に勤務するほどの人材とは思わなかった。
帰国後、外務省へ出向き、語学力を生かす仕事はないかと相談に行くと、各種の国連職員の採用について教えてくれたという。その友達は、外務省の敷居など高いとは思わず、外務省の役目について識っていたらしい。
外務省では海外の公館職員を現地で採用することも多い。敷居など気にせず、一度は総領事館へ行ってみよう。想像していなかった、雑多な情報が転がっているかもしれない。
パスポートの問題以外、関係ないと決めつけていた公館が、意外にも己の人生を左右しかねないのだ。とは言っても、公務員嫌いの反権力主義者からすれば、魅力を感じる役所などではあるまい。
そもそも私などは、「大使」なんて雲の上の人だと思っていた。難しい外交官試験にパスして、それなりのキャリアを積んで就くポストに変わりはないが、私の知るかぎり、好感のもてる人材が揃っている。一言でいえば、威張る権威主義者などいない。
食わず嫌いの人、偏見でこり固まっている人。こんな日本人がNYCにたくさんいたけれど、現在のNYCに住む日本人の性格はどうなのか、私には興味がある。素直になれない個性派が多数を占め、活動範囲を己で限定していた感があった…。
ニューヨーカーの特色を論じる前に、住む日本人の思想や性格にも特徴があったと思う。「頑固者」が多かったし、この人たちはNYCを愛していた。和製ニューヨーカーだったのだ。
