
文:ミスターM
笑いの観点から社会を正す謎の男
春です。すっかり春です。皆さんいかがお過ごしですか? 季節の情緒とか自然の趣とかそーゆーのを解するハイセンスな私は桜の咲き乱れる並木道を散歩しながら「ピンクの花ビラって捉え様によってはエロい」などと春の風情を楽しんでいます。
春と言えば出逢い、そして同時に別れの季節でもあります。私がまだ桜を見てもエロを感じないチビッコだった頃、むしろ桜より頭の中のお花畑が年中満開なチビッコだった頃の桜舞う四月、クラスに田村くんという子が転入してきたんですけどコイツが桜前線に乗ってやってきた圧倒的な地方育ちの風雲児でした。
まぁ、私の住む福岡県もバリバリの地方なんですが、田村くんは更に上をゆく異世界からの使者でして、以前住んでいた所はコチラに比べてテレビのチャンネル数が少なかったためにアニメの話題にも全く付いてこず、アクセントの違いで普通に喋るだけでクラスメイト全員が大爆笑ってレベルの炎の転校生だったのです。
当時の私は子供心に「他県に住む
のは嫌だな。なんかカッコ悪いし、毎週欠かさずチェックしていたあのアニメが急に放送されなくなったら困るもんな」などと田村くんへの差別とも同情とも言える気持ちを抱いていたんですね。
まぁ、当の田村くんにしてみれば住んでいた場所が違うからって差別を受けるのは不当ですし同情されても余計なお世話でしょうけど、ともかく当時の私はそう思ったわけですよ。そんなわけで密かに心の中で蔑んでいた彼にある日、こう話しかけられました。
「ミスターMくんってエロ本ば、見たことあるね?」
「な、ななな、な、ないけど、田村くんは?」
「俺はあるばい。前に住んどった家の近くの雑木林ん中に山んごと捨てられとったけん」
いやいや、誰ですか? 他県が嫌だなんて言ったのは? テレビ番組や話し方が違ってもソコには楽園があるじゃないですか? 私が彼に抱いていた浅ましい侮蔑の感情が尊敬と憧れに変わった瞬間です。
私の知らない世界を知る彼が急に大人に見えて、相対的に自分自身がとてもちっぽけな存在に思えて、ああ 何だか凄く眩しいよ! 眩しすぎるよ! 田村くん!
エロ本というパンドラの箱を開け、未踏の地に立った、チビッコ聖人こと田村くんでしたが翌年の春に再び別の地方へ転校してしまいました。桜前線に乗ってやってきたエロ少年は桜前線と伴に去っていったのです。
決して忘れることのできない出逢いと別れ。私は毎年、桜の咲く頃になると彼のことを思い出し、桜並木からいつの間にか雑木林に散歩コースを変更してしまいます。田村くん元気にしていますか? 私は下半身が特に元気です。


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