
主な登場人物
矢間下 珍司…大阪府出身。大学生。サッカーと料理無しの人生なんて有り得ないと豪語
獅子戸 貝子…東京都出身。ダンサー。珍司の彼女。大のチーズとマヨネーズ好きで、得意料理は中華丼。
末岡 衆図…東京都出身。ミュージシャン。貝子の幼馴染みでもあり珍司の親友でもある。
達味 琢子…福岡県出身。ダンサー。アネゴ肌で貝子の良き相談相手料理は苦手だが、結構グルメ通
ドッディ…珍司の遊び友達でイタリア・ローマ出身のオットコトコ前君。
![]() 居酒屋 有吉 |
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珍司との久しぶりのデートへと向かった貝子は突如自分の携帯が鳴っていることに気付き、電話をハンドバックから出しながら、ふと思った。(嫌な予感がする・・・) 「もしもし、珍司?」 「はろー、貝子か、俺や。悪いけど仕事が延びそうやねん。先に行っててくれ。俺の友達もすでに到着してるはずやから、俺を待たないで2人で飯食っててくれて構わん。ドッディによろしく。じゃーな。」 「え、何時になるの?ドッディって誰よ???」 ツーツーツー 都合の悪い時はさっさと電話を切ってしまう、というのが貝子の“口撃”から身を守る最高のテクニックであることを珍司は知っている。 「信じられない!いつもこうなんだから。むかついたらムショーにお腹がすいてきたわ。」 珍司の勝手な行動に納得のいかない貝子は、やけ食いを心に決めて珍司との待ち合わせ場所であったレストラン「OROBLU」へと到着した。 「すごく久しぶりだわ、ここへ来るの。去年のワールドカップ以来かな。あの時は、毎試合400人ぐらいが来て盛り上がりまくったものね。あれ、新しくバーラウンジが出来ててお酒を飲みながらソファーでもリラックスできるのね。仕事帰りのお洒落なビジネスマンたちが談笑してるわ。お店の雰囲気とマッチしてとっても素敵ねー。珍司があんなんだから、もう、浮気でもしちゃおうかしら。あら、誰か近づいてくる。なかなかいい男じゃない。」 「ハーイ、美しいユー。貝子だろ?ぼく、珍司の友達のドッディ。珍司は遅れてくるそうだね。ぼくにとってはとってもラッキーなことだよ。こんなに美しい人と一緒に過ごせるんだもの。さあ、さっそくテーブルへ着こうか。」 テーブルに着くやドッディが機関銃のように話し始めた。 「僕はイタリアーノなんだ。珍司にイタリア人にもオススメできるイタリアンレストランがあるって聞いてすごいエキサイトしてるよ。しかも、こんなに綺麗な女性と共に食事ができるんでそれがさらに倍増でさ。ここはホントにロマンティックで雰囲気がいいね。恋人達も沢山いるし。今夜の僕たちの出会いにぴったりだ。ほら、ワインセラーがあるだろ、好きなワインをオーダーしなよ、君の瞳に乾杯!」 |
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「(恥ずかし過ぎだわ。これが噂のイタリアンな口説き方なのかしら?まんざら悪い気しないけど)あらー、ほんとに大きなワインセラーね。こんなに大きなワインセラーがあってたくさんのワインがあるレストランも珍しいわ。でも私、今夜はお酒は遠慮しておくわ。酔うと色々とまずいから。(特にあなたといると・・・)」 「酔った貝子も見てみたいんだけどな・・・とりあえずこのスペシャルプリフィックスメニューをオーダーするよ、 大好物のイタリアンに素敵な女性、オー、今夜の僕ほどラッキーな男はいないな。」 「まあ、ドッディったら・・・いつもそんなことばっかり女の子に言ってるんでしょ。あなた珍司の友達だけど、珍司とは大違いね。一体どこで珍司と出会ったの?」 「珍司と僕はサッカーを通して出会ったんだ。僕たちは国は違えどサッカーを愛する気持ちは一緒だよ。知ってると思うけど僕たちイタリア人はサッカー命なんだ。サッカーの為に仕事して食事して寝て、まさにサッカーの為に生きているんだ。珍司は日本人とはいえ、彼のサッカーに対する愛には僕も脱帽だよ。彼は僕の日本のブラザーさ。ただ日本男児は女性への愛情が足りない、そう思わないかい?こんな美しい彼女を放っておいて仕事なんて、僕には考えられないよ、貝子、この際珍司の事なんて忘れてしまって・・・」 ドッディが貝子の手を握りしめようとした瞬間、好色男・高田純二似のウエイターによって前菜のイタリア風焼きハマグリとシーザーサラダが運ばれてきた。オロブルのプリフィックスメニューは前菜2品、メインは3品の中からチョイスできるのだ。色んな種類をいいとこ取りで少しずつ楽しみたい、というイタリア人の恋愛のポリシーとも言えるドッディの考えによって2人にそれぞれ違う料理が運ばれてきた。 「んー、まさに本場の味。ハマグリのほのかな潮の香りがなんともいえない。」 「こっちのシーザーサラダも絶品よ。アンチョビが入ってるから他の店のシーザーサラダよりこくがあるのよ。」 「貝子、君は美しいだけじゃなく本当のイタリアンというものを知っているんだね。最高だよ。僕の理想の女性像にぴったりだ。珍司ってなんて親切な男なんだろう。こんなにすばらしいレストラン、そしてこんなに素敵な女性を僕に紹介してくれたんだからな。持つべきものは友だな。」 (おいおい!)と心の中で突っ込みを入れる貝子の目の前にさらにドッディを調子づかせるべくメインディッシュである仔牛のタマゴ包みとラビオリが運ばれてきた。 「この仔牛料理は日本でいうカツみたいな感じね。でも仔牛のぶんすんごくやわらかいし、卵も手伝ってすごくやさしい味。白ワインとレモンソースもお肉にすごく合う。そっちのメインディッシュのラビオリの中に入っているのは何、ドッディ?」 「これはリコッタチーズだよ。このホームメードのパスタといい、トマトベースのクリームソースといい、イタリアにいるマンマを思い出させるよ。マンマはトマトのペンネ料理が得意でね。僕はイタリアにいたときは毎日のように食べてたよ。」 「あら、ここのペンネのグラタンも絶品なのよ。クリーミーで濃厚だけどいくらでも食べれちゃう、絶対あなたも気に入るはずだわ。その他にもここはお客さんの好きなものをいれて特別にリゾットを作ってくれるし、あとはペペロンチーノなんかもほんとにおいしいのよ。1回では頼みきれないし食べきれないので、今度はまた違うものを食べにここに来なきゃね。」 「そうだね、貝子。おいしいイタリア料理と君がいてくれるのなら、僕はいつだってここへ戻ってくるよ。僕は本気さ、君がイエスと言ってくれるまで・・・。」 「まあ、ドッディ。あなたそこまであたしの事を・・・そうね、珍司は忙しいしあたしのことちっとも構ってくれないし。その点あなたはやさしいし・・。」 貝子がデザートの山盛りのティラミスを頬張りながら考えていると、突然誰かがドッディを呼ぶ声がした。 「ドッディ!あなた、何やってるの、こんなところで」 「は、ハニー、ご、ご、誤解しないでくれ。違うんだ、これは、彼女は僕の友達のガールフレンドでただ食事してただけなんだ。それよりハニー、今日は仕事遅くなるんじゃなかったのかい?」 「早く切り上げてきちゃったのよ。あなたに会いたくて会いたくて仕方がなかったから。」 「ハニー、僕だって会いたくて会いたくて仕方なかったさ。僕が一瞬たりとも君の事を忘れるはずがあるかい?」 人目もはばからず濃厚なキスを見せ付けられ唖然としている貝子のもとに息を切らせた珍司がやってきた。 「遅れてすまんな、っておい。これ一体どうなってんねん?」 「ハーイ、珍司。僕たちこれで失礼させてもらうよ。このレストランはほんとにおいしかったよ。今度はマイハニーと一緒に必ずここに戻ってくるよ。貝子、ナイスミーティングユー、チャオ!」 「なんかよう解らんけど、相変わらず好色やなー。で、どうやった、貝子。あいつエエ男やったやろ?」 嵐が去ったあとのように静かになった店内でドッディ達を見送った珍司を横目で見ながら貝子は、大好きなティラミスを一口頬張って思った。 イタリア料理にはティラミス。私にはやっぱり珍司じゃなくっちゃね。 |
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