「踊るで、しかし」は、毎月第3木曜日にニューヨークで発行される読者参加型のフリーペーパーです
2001年9月の創刊から10〜40代に絶大な人気を誇るお笑い系フリーペーパーとしてNY在住日本人に認知されています。
ライター陣は政治家、お笑い芸人から構成作家までと幅広く、イラスト入り「NY人間図鑑」はNY日本人社会を反映させていると大人気。
毎月開催するクラブイベント情報も掲載中です。

叩いてないのにホコリが出る、つついてないのにネタが飛び出す、無敵のダメン(駄目男)「ひろや」の、限りなくフィクションから遠いコラムだぜ!お前らの想像を絶するひろやの体験記は、ファーブル昆虫記にも負けず劣らずの感動巨編だぜ!学習能力の活性化を目指す彼と一緒に、お前らも学ぶのだ!転ばぬ先の杖だぜ!転んじまったら起き上がれ!

文:ひろや
「同じ失敗は繰り返さない」をモットーにしているにも関わらず、ニワトリ並みの記憶力で都合の悪い事はどんどん忘れていってしまう。進歩が無い人類世紀最後のダメン。

「いつかのメリークリスマス」

クリスマス。恋人達にとって一年で一番大きなイベント! 20歳になったばかりの俺は、スズメの涙程度の収入にも関わらずアコムもびっくりの無計画! 宵越しの金は持たない江戸っ子というわけでもないくせに、いつも財布はすっからかんの俺が用意した彼女へのプレゼントは、自分のお気に入りの選曲のカセットテープただ一つ。「プレゼントは金額じゃない!気持ちがこもっていればそれでいい!!」なんて言っても、さすがにまずい・・・。もう立派に成人しているのに・・・。これじゃ小学生の頃に母ちゃんに肩たたき券をあげていたのからほとんど進歩がない。

さすがに、恥ずかしくなった俺は、急遽クリスマスイブにバイトをすることに。イブの夜を豪華に過ごすために選んだバイトは・・・、花屋! DJの先輩の実家が花屋だったので頼み込んだのだが、なんとなく楽そうだし、響きも良い! 爽やかな花屋のお兄さん・・・、なんかモテそうな香りがする!

しかし、そんなに世の中は、甘くない! この時期の花屋は大忙し。クリスマスプレゼント用の花の販売のみならず、クリスマスパーティーの飾り付け、そして気が早いことに正月の門松の配達&設置まで・・・。

 当日、まずは早朝5時集合で市場に連れていかれ、生まれて初めての競りに参加。熱気ムンムンの中、額にはちまきの男の世界!この時点ですでに、俺のイメージしていた花屋とは大分異なっている・・・。

この日の競りのターゲットは正月用の門松。まだクリスマスイブだというのに、市場は常に世間の先をいく。何個か競り落とした門松を取りに親方について奥の倉庫へ行くと・・・。重い!!! これが本当に重い! 自分の体よりでかい門松は、大人3人がかりでも10センチ持ち上げるのがやっと。しかも、不良のささくれたハートよりも尖がっている松の葉が刺さりまくる。30分かけてトラックに乗せた俺の腕は、松の葉で傷だらけ。花屋というと聞こえは良いが、こりゃアメ横の魚屋のバイトに勝るとも劣らない肉体労働。花屋の店先で爽やかな笑顔を浮かべて・・・と思っていたのだが、実際の作業は、汗と松の花粉にまみれながらの門松配達&設置。

さすがに、昼過ぎには作業にも慣れ、段々と楽になってくる。「この調子なら夕方には終わりそうだ。おまえら頑張ったから、ちょっと色付けてやるからな!」という親方の言葉がさらに気分を軽くする。だが・・・、緊張していた俺の気がゆるんだまさにその時、事件は起きたのだ・・・。

その日最後の配達先。親方にそう告げられて向かったのは蒲田の自治会館。ここに、門松を設置すれば、ついに任務完了。そう思うと、最初はとても憎たらしかった門松もだんだん可愛くなってくる。

渋滞を越え、品川からついに蒲田に到着。そして、到着した会館で俺達を待っていたものは・・・。会館の壁際にすらっと並んだおびただしい数の弔花の列! お店の新装開店の時とかに店の外に立ち並ぶ、めでたい盛花ではない。形は似ているが色が違う!弔花である・・・。俺達の仕事は、しめやかに行われている葬儀の真っ最中の会場への門松設置・・・。なんて罰当たりな!

とりあえず電話で連絡を取った依頼主は、奥の倉庫に入れるよう親方に指示をする。依頼された通りにするしかない俺達は、できるだけこっそりと門松を奥に運ぼうとするが・・・。あまりの重さのせいで、俺達がどんなに頑張っても1分で数メートル進めるのがやっとの門松運び。中の参列者にバレないうちにすませられるわけがなかった。葬儀の最中に門松を運び込む俺達の姿に唖然とする参列者達。親方は一生懸命事情を説明するが、全く聞く耳を持たない親族一同。もちろん、当たり前なのだが・・・。葬式に門松を持って来られたら、怒らないほうがおかしいだろう。親方も親方で、仕事だからとまったくひこうとせず、むきになった一同はついに殴り合いに・・・。小心な俺は一応止めに入ったものの、軽く一発殴られると、すぐさま110番!

数分でかけつけた警官によって暴動は抑えられ、けっきょく門松の搬入は葬儀が終わるまで待つということで決着。これで一件落着かと思ってホッとしたのだが・・・。警察が来るまでの数分間、数人に囲まれてボコボコにされてしまった親方の怒りはまだ静まらず。そのまま、その足で警察に被害届けを出しに向かう・・・。だが、もちろんケンカ両成敗。親方も結構殴っていたのだから、そりゃ訴えなんて通るわけもない! 警察で諭されるものの、それでも納得がいかない様子の大人げない親方(42歳)の視線が俺に移った瞬間、突然笑顔になった彼・・・。

「おい、ヒロヤ!お前たしか殴られたろ?」

満面の笑みで問いかける親方の問いかけに、素直にうなずく俺の顔には、もう殴られた痕跡など残っていない。ほとんどノーダメージだった俺の傷跡は、親方が警察で駄々をこねている2時間のうちに跡形もなく消えていたのだが・・・。親方の押しに勝てずに被害届を出すことになった俺。被害届を出すために医者の診断書が必要だと知った親方は、迷わず119番! 無傷の俺を乗せて病院へと走る救急車の中で、親方のテンションとは対照的な俺と救急隊員達。

そんなこんなで到着した病院で、なぜかお医者さんに必死のアピールをさせられる俺。あきれ顔でカルテに一言書き込む先生・・・。

打撲。全治一日。

なんとか診断書を書かせることに成功した俺は、そのまま警察に舞い戻り調書作成。俺を殴った相手を警察署に呼び出し、ついにお詫びの言葉を引き出したその時は、もうとっくに日付も変わって午前4時。意味のない努力が実を結ぶやいなや、「今日も早いからっ」と一人満足して笑顔で帰っていってしまう親方・・・。

結局、その日のバイト代を使って世田谷の自宅までタクシーで帰宅。家に着く頃にはもう日が昇り、手料理を作って待っているはずの彼女の姿はなかった。代わりに机の上には食べかけのケーキと一通の手紙が・・・。

「もう、こんなの嫌」

俺も嫌だ!

 

 それ以来、何故かクリスマスには運のない俺。クリスマス嫌いなのは、グレムリンのヒロインの女の子と俺ぐらいのものだろう。今年のクリスマスは良い思い出を作りたいと切に願うが、どうやら雲行きは怪しい・・・。

いつかできる(はずの)クリスマスの幸せなお話は、また別の機会に・・・。

今月の教訓
「クリスマス。クルシミマス」

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2007

2006

  • 「いつかのメリークリスマス」
  • 「ダメンの夏日記
    (NYビーチ編)」
  • 「サプライズ」
  • 「美人局」
  • 「YKK」
  • 「ダメンの諸国漫遊機
    (マイアミ編)」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―後編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―前編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (チャリンコ旅行編)」
  • 2005

  • 「お漏らし」
  • 「メジャーの壁」
  •  
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