「踊るで、しかし」は、毎月第3木曜日にニューヨークで発行される読者参加型のフリーペーパーです
2001年9月の創刊から10〜40代に絶大な人気を誇るお笑い系フリーペーパーとしてNY在住日本人に認知されています。
ライター陣は政治家、お笑い芸人から構成作家までと幅広く、イラスト入り「NY人間図鑑」はNY日本人社会を反映させていると大人気。
毎月開催するクラブイベント情報も掲載中です。

叩いてないのにホコリが出る、つついてないのにネタが飛び出す、無敵のダメン(駄目男)「ひろや」の、限りなくフィクションから遠いコラムだぜ!お前らの想像を絶するひろやの体験記は、ファーブル昆虫記にも負けず劣らずの感動巨編だぜ!学習能力の活性化を目指す彼と一緒に、お前らも学ぶのだ!転ばぬ先の杖だぜ!転んじまったら起き上がれ!

文:ひろや
「同じ失敗は繰り返さない」をモットーにしているにも関わらず、ニワトリ並みの記憶力で都合の悪い事はどんどん忘れていってしまう。進歩が無い人類世紀最後のダメン。

「サプライズ」

 ガングロ。ガングロ。ガングロ。

 日焼けサロンで働く友達にS子を紹介されたのは、まさにギャル全盛期。俺は別にギャルにはあまり興味はなかったのだが、S子がギャルの殿堂、「109」で働くカリスマ店員と聞いて、好奇心ではるばる会いに行くことにした。

 それまで俺が出会ったギャルというと、初対面で
「はじめまして」(俺)
「あははー。この人、脱いだら貧弱そう」(ギャル)
「・・・・・・・・・」(俺)
こんな感じの、すっかり頭の中まで日焼けしてしまったギャルにしか会ったことがなかったので、正直なところかなり悪いイメージを持っていたのだが・・・。S子はまったく違った。

 顔は真っ黒! メイクはドハデ! 露出も大目! 外見はまさに典型的なギャルであった彼女だったが、話してみるとこれまでの俺のギャルイメージとはかけ離れた、おとなしくてしっかりした子であることが判明。良い意味で予想を裏切られた俺は、S子のギャップに恋してしまい、数日後に俺たちは付き合うようになっていた。

 付き合ってみて分かったことが一つ。女は化粧で化けるということ。今回の話には関係ないのだが、驚きまくったので書いておく。メイクを落とした彼女は、まったく別人。それまでは厚化粧反対派だった俺も、これを機に女の化粧肯定派に所属するようになる。メイクだろうと整形だろうと綺麗ならば良いのだ! 経過よりも結果重視の俺に周囲からは批判の声も多数あがったが、俺は実際に体験してしまっていたのだからしょうがない。下手な整形よりもすごい大変身を・・・。

 話を戻そう。お互い忙しかった俺とS子のデートは週に1、2回。仕事の時間も合わなかったのだから仕方がない。俺の休みの日に仕事後の彼女と食事に行き、俺の家でいっしょに寝る。本当にシンプルなデートのみ。彼女もかなり貧乏だったので、それでも文句を言わなかったのが意外と長く続いた理由だろうか。カリスマ店員のわりに驚くほど少ない稼ぎは、日焼けサロンと化粧代に消えていく。とてもデートに使う金なんてない。俺の誕生日でさえ質素に二人でオムライスを作って食べるだけ・・・。プレゼントも特になし。クリスマスも目前に迫っていたのだが、どうせ金もないので特別なことをするわけでもなし、お互い仕事も入っていた俺たちは26日に二人でパーティーをする約束をした・・・。

 クリスマス当日、いつものように仕事に出かけ酒を飲む、飲む、飲む・・・。当時の俺の仕事は酒を飲むことと言っても過言ではないような感じだったので毎晩飲んでいたのだが、さすがはクリスマス。スペシャルナイトだけに酒もいつもよりもススむススむ。いちゃつくカップル達のためのBGM係は、酒を飲まずにはやってられないのだ。シャンパンに始まり、何種類のお酒を飲んだのだろう。日が変わることにはもうDJ仲間はみな酒に溺れていた。

 朝方、仲間の一人が唐突に風俗に行きたいと言い出し、いつもよりテンション7割増しの俺達は皆で行くことに。何を隠そう俺は風俗未体験で興味もあまりなかったのだが、行く先がイメクラ(イメージクラブ。日常起こりえないシチュエーションの中で楽しむ風俗の一種)だと聞いて、悩みながらも付いて行くことにした。
 なぜなら、自慰はおかずに頼らず自分の想像力一本で勝負することをモットーとして生きる妄想探検家の俺にとって、その想像を現実に体験できるイメクラは、一度は行ってみたいと憧れていた聖地だったのだ。

 DJ仲間3人でお店に着くと、皆で壁に張られている女の子の写真に群がって真剣な眼差しで吟味し始める。先ほどまでレコードを選んでいた時よりも間違いなく真剣だったのだが・・・。クリスマスの夜、寂しい男の憩いの場である風俗店が空いているわけがない。お店の人から、今夜は混んでいるから女の子を選ぶことができないと告げられる。もちろん、そんなことで酔っ払った俺たちは負けるはずがなかった。
 女の子が選べないことがわかると、今度はコースを吟味しだす。「電車痴漢コース」「社長と秘書コース」「痴女コース」「擬似カップルコース」などなど華やかに並ぶリストの下に大きく書かれた「サンタとトナカイコース!」の文字。なにやらクリスマス期間限定コースらしいではないか・・・。一瞬、ノーマルそうなものの意外に興奮しそうな「擬似カップルコース」(普通のカップルを装う)にも惹かれたものの、やはり俺も限定物には目がない日本人。数分後にはトナカイの着ぐるみに身を包み、部屋で一人ミニスカサンタの到着を待っていた。

風俗初体験。めちゃくちゃ緊張して待つこと数分、ノックの後に「スモモで~す」というメルヘンチックな声と共に登場したのは・・・。スモモと書いたでっかい名札を付けた超ミニのガングロサンタ・・・俺の彼女S子!

「チェンジしますか・・・」

しばらくの沈黙の後、ようやくS子から出たセリフに、俺は答える・・・。
「いや、OKです」                                                                             

 結局、途方に暮れ過ぎてどうしてよいか分からないまま、お互い言葉を交わすことなく予定通りプレイに入る・・・。
「サンタさん、僕にも何かプレゼントを下さい・・・。」
「何が欲しいの、言ってごらんなさい・・・。」

まったく感情の入らない学芸会を台本通りにすませ、お金を払って店を出る。仲間はみんな、女がどうだったとか、プレイがどうとか感想を熱く語りあっているが、俺はとても言えたもんじゃない。サンタプレイのみならず、「擬似」いやいや、「真のカップルプレイ」まで頼んでもいないのに付いてきたことなど・・・。ましてやそんな状態で2ラウンドも戦ってしまったなど・・・。

 その夜のことは触れないまま、自然と別れて友達に戻った俺とS子。数年後、いっしょに飲んだ際に思い切ってなぜ働いていたのか聞いてみたのだが・・・。「日焼けサロン行く金なくて」とあっけらかんとした口調で返された答えに、俺は言葉ではなく涙しか出なかった。
 それ以来ギャルと風俗には二度と手を出さないと決めた俺が、酔っ払ってカラんだガングロ風俗嬢達に集団リンチをされることになるのだが、その話はまた別の機会に。

今月の教訓 「君子危うきに近づかず」

 

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2006

  • 「いつかのメリークリスマス」
  • 「ダメンの夏日記
    (NYビーチ編)」
  • 「サプライズ」
  • 「美人局」
  • 「YKK」
  • 「ダメンの諸国漫遊機
    (マイアミ編)」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―後編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―前編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (チャリンコ旅行編)」
  • 2005

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