「踊るで、しかし」は、毎月第3木曜日にニューヨークで発行される読者参加型のフリーペーパーです
2001年9月の創刊から10〜40代に絶大な人気を誇るお笑い系フリーペーパーとしてNY在住日本人に認知されています。
ライター陣は政治家、お笑い芸人から構成作家までと幅広く、イラスト入り「NY人間図鑑」はNY日本人社会を反映させていると大人気。
毎月開催するクラブイベント情報も掲載中です。

叩いてないのにホコリが出る、つついてないのにネタが飛び出す、無敵のダメン(駄目男)「ひろや」の、限りなくフィクションから遠いコラムだぜ!お前らの想像を絶するひろやの体験記は、ファーブル昆虫記にも負けず劣らずの感動巨編だぜ!学習能力の活性化を目指す彼と一緒に、お前らも学ぶのだ!転ばぬ先の杖だぜ!転んじまったら起き上がれ!

文:ひろや
「同じ失敗は繰り返さない」をモットーにしているにも関わらず、ニワトリ並みの記憶力で都合の悪い事はどんどん忘れていってしまう。進歩が無い人類世紀最後のダメン。

「YKK」

 ランドセルをしょって、毎日ドッジボールに明け暮れていた、あの頃。全てが輝いて見えた、あの頃・・・。

 一日の最大の楽しみである給食後の昼休み。クラスのみんなでドッジボールをしていると、あっという間に昼休みの終わりを告げる鐘は鳴る。午後の授業開始5分前の合図である。グラウンドからみんなで引き上げ、一度は教室に戻ったものの、突然尿意をもよおしてしまい、小学生恒例の「連れション」をすべく友達に声をかけてトイレに駆け込む俺。チャックを開け、まだ成長前の可愛い息子を覗かせて、いざオシッコ開始。
並んでオシッコをする俺達をよそに、まだ放尿の途中にも関わらず無情にも授業開始の鐘は鳴り響く。あまりオシッコをしたかったわけでもなく、ただ俺に誘われたからトイレに来ただけの友人Sは、即座に放尿を済ませると俺を急かす。
「早くしろよ、先生来ちまうぞ!」
とは言われても、生理現象は自分でコントロールできるもんじゃない。焦る俺をよそに、快調に出続けるオシッコ。
ようやく尿を出し切ったところで事件は起きた・・・。

「痛っ」

チャックを上げると同時に激痛が走る! 俺が反射的に見てみると・・・。なんと、息子の皮の先っちょがチャックに挟まっているではないか。あまりに焦っていた俺は、チャックを上げる際に大事なところの皮を巻き込んでしまったらしい。すっかり成長した今となってはありえない事件であるが、この頃はまだ小学5年生。皮もだいぶ余っていた・・・。
突然痛みを訴えた俺に驚き、問いかけてきたSに、なんでもないふりをして精一杯ごまかす俺。まだ小学5年生、オコチャマとは言っても、羞恥心はしっかり芽生えてきている微妙な年頃。しかも、もしこれがばれたら変なあだ名を付けられるのは目に見えている。この年齢の子供は、馬鹿に出来るネタを常に探し求めている生き物なのである。
チャックにしっかりと巻き込まれていたおかげで、とりあえず軽く見たぐらいでは全く分からないのがせめてもの救いか・・・。後は5時間目の授業、ただ1時間を残すのみ・・・。このまま乗り切る決意を固める。

痛みが止まらないままとりあえず教室へ戻ると、もう授業は始まっていた。遅れてきたことを先生に軽く怒られてから席についた俺は、必死に激痛と戦いながらも皆に見えないよう、こっそりとチャックとの格闘を再開する。第2ラウンドは持久戦!机の下でチャックを徐々に下げていってみるものの、挟まっている部分にいくと激痛が走るので耐え切れずにまたゆっくり元に戻していく。しかし、それでもあきらめずに、湧き出す冷や汗を拭きながらチャックをいじくり続ける俺。
そんなこんなで全く授業に集中できないまま第2ラウンド終了を告げる鐘(授業終了の鐘)が鳴り終えるのを待つと、俺はランドセルに荷物を詰め込み急いで帰宅の途につこうとする・・・が、そうは問屋がおろさない。ここは小学校。下校はいつも仲の良い友達とみんなで一緒と相場が決まっている。教室を出ようとしたところで友人に捕まった俺は、結局みんなと一緒にいつもの寄り道コースを通って帰ることに。

学校の隣の駄菓子屋で40円のコロッケを買って、林の中の道を抜けて帰る・・・。その間も常に俺の息子は窓からこっそり顔を覗かせている。痛みもそうだが、恥ずかしさも相当なもんだ。まさに思春期の入り口に差し掛かったばかりの時期。まだ露出プレイを楽しむ余裕は全くない。
ばれないよう痛みを隠しつつ、なんとか家に到着すると、もう俺は痛みの限界に達していた。恥ずかしさを忘れて家に入るなり母ちゃんに向かって叫ぶ。

「母ちゃん、おチンがーーーーー!!!!!」

帰ってくるなりあらぬことを叫びだした息子に呆然とする母に、すぐさま状況を説明する。母もさすがにどう対処してよいのやらしばらくの間は戸惑っていたが、とりあえず患部を真剣なまなざしで見つめだす。家に無事到着したことの安心感と、母に自分の大事な部分を凝視されるという恥ずかしさの極みのせいで、ついに泣き出してしまった俺に、母は暖かい言葉をかけてくれる。
「大丈夫。ここは大事な部分じゃないから。子供の歯みたいなもんだから。」
皮がそのうち剥けてくるものだということも知らなかった当時の俺には、まだその言葉の真意までは汲み取れなかったが、なぜか母のその一言で段々と落ち着きを取り戻す。
母は、とりあえずチャックをうまく下ろそうと試みるが、あまりの激痛にうめき声をあげる俺を見て、普通に下ろすのをあきらめる。じゃあ、チャック自体を壊して、左右に外れるようにしてしまおうと、今度は半ズボンを裁縫用のハサミで裾からじょきじょきと切断しだす。まわりを切っても意味がないように思ったものの、もう母のなすがままにしているしかない俺。ようやく最後に大事な部分の周りを慎重に切り終わり、いよいよ本番。チャックをハサミで破壊するべく、ハサミを持つ手に力を入れる母・・・。しかし、さすがは「YKK」!メイド・イン・ジャパン!そんなにやわなわけがない。無傷のチャックを見つめながら、自分のしたことの無意味さに気づく母。
結果的に、半ズボンはチャックを残して見事に消え去ったものの、俺の皮を挟んだチャックは装飾品のように装備されたまま、まだまだ健在・・・。
申し訳なさそうな顔をする母を前に痛そうな顔もできず、逆に母を励ます俺。

すると母は、思いつめた顔をして電話機までかけよると、おもむろに119をダイヤルし、一言・・・。

「息子の息子が・・・。」

30分後、駆けつけた救急隊員の持っていた特殊な大型ハサミによって、事件発生から5時間ぶりに救出される俺の息子。一撃で分解されてしまったチャックと、見事なまでに先っぽが腫れあがった息子を見比べながら、なぜか複雑な気持ちになっていた俺の横で、
「せっかくだからついでに皮も切っちゃいましょうか??」
と母に包茎手術を勧めてくる救急隊員・・・。
「まだ子供なんで・・・。10年後にお願いします。」と、俺のオペの予定を勝手に決める母・・・。

隣の席の女の子に、「5時間目と帰り道の間、ずっと額に汗を浮かべながら自分の息子をいじっていた」との事実9割、嘘1割の噂を広められた俺は、次の日から早速「ジイや(自慰や)」という名誉あるあだ名を付けられることに・・・。  
しかし、それを機会に、逆に学校中の人気者に成り上がっていくことになるのだが、その話はまだ別の機会に・・・。

 

今月の教訓
「閉まるドアに、ご注意くださ~い」

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2007

2006

  • 「いつかのメリークリスマス」
  • 「ダメンの夏日記
    (NYビーチ編)」
  • 「サプライズ」
  • 「美人局」
  • 「YKK」
  • 「ダメンの諸国漫遊機
    (マイアミ編)」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―後編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―前編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (チャリンコ旅行編)」
  • 2005

  • 「お漏らし」
  • 「メジャーの壁」
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