「踊るで、しかし」は、毎月第3木曜日にニューヨークで発行される読者参加型のフリーペーパーです
2001年9月の創刊から10〜40代に絶大な人気を誇るお笑い系フリーペーパーとしてNY在住日本人に認知されています。
ライター陣は政治家、お笑い芸人から構成作家までと幅広く、イラスト入り「NY人間図鑑」はNY日本人社会を反映させていると大人気。
毎月開催するクラブイベント情報も掲載中です。

叩いてないのにホコリが出る、つついてないのにネタが飛び出す、無敵のダメン(駄目男)「ひろや」の、限りなくフィクションから遠いコラムだぜ!お前らの想像を絶するひろやの体験記は、ファーブル昆虫記にも負けず劣らずの感動巨編だぜ!学習能力の活性化を目指す彼と一緒に、お前らも学ぶのだ!転ばぬ先の杖だぜ!転んじまったら起き上がれ!

文:ひろや
「同じ失敗は繰り返さない」をモットーにしているにも関わらず、ニワトリ並みの記憶力で都合の悪い事はどんどん忘れていってしまう。進歩が無い人類世紀最後のダメン。

「ダメンの日本漫遊記(札幌ススキノ編)―前編―」

悪友と毎年恒例で行うダメ旅行。高校卒業にあわせて、旅のツールも自転車を卒業して電車へグレードアップ。しかし、基本コンセプトは何も変わらずいたってシンプル。出発当日に方角(東西南北)だけ決めて、電車に乗り込む。最終目的地は決めないのでとりあえず一番安い切符を購入し、車掌さんが切符の見回りにくるまでの間に行けるところまで行く。もし来てしまったら、そこまでの金額を全額払って、そこで旅を終える。いたってシンプルなルール。初の「冬」開催となる今回の旅は、「雪を見る」をコンセプトに進路を北に決め、俺たちは東京をあとにする・・・。
旅は順調に進み、あれよあれよという間に早や3日目。ここまで、車掌の切符確認にも遭遇することなく、途中下車した駅はなぜか幸運(?)にも全て無人駅。切符の精算を一度もせぬまま、いつの間にか本州を越え、北海道は札幌へ。
出発前は、仙台あたりでの旅の終わりを想定していた俺達。普通電車での東京から札幌までの運賃は全く見当もつかないが、仙台を想定したぎりぎりの金額しか用意してこなかった俺の所持金はとうにオーバーしているだろう。まあ、お金はいざとなったら慎重派で有名な相方が余分に持ってきているだろうから、借りてしまえばいいので問題ないにしても・・・。まさに想定外
このままエスカレートしていくと北海道はおろかパスポート不所持のまま、ロシアまで行ってしまってもおかしくない。下手するとこのまま北極探検・・・、なんてことになりかねないので、ここらでついに自首することに・・・。

「あのー、すいません。僕たち乗り過ごしてきたんですけど・・・。」
「どこから乗ったの??切符見せて・・・。これどこ??」
東京です。」
・・・・・・・・・・

駅員室に連行され、事情を話す。最初は4人の駅員に四方を囲まれ、かなりの勢いで怒られたのだが、正直に全てを話したことが幸いしたのか、単にあきれられたのか、・・・。最初は途方もない金額を請求されたのだが、結局は約50%ものディスカウントをして頂き、俺の所持金でぎりぎり支払える額をその場で支払い許してもらうことに。

ピンチを切り抜けた俺達は、吹雪く札幌の街に飛び出し、早速頭を切り替える。初北海道を堪能しようとテンションを上げて観光名所を巡る・・・、が、2時間後には、寒さと長旅の疲れで体が動かなくなり、宿を探すことに・・・。そこでようやく気付いたことは・・・。二人とも無一文!まけてもらったとはいえ、予定距離を大きく超えた札幌までの運賃を支払った俺達の財布の中身はもうすっからかん。お互い、相方に金を借りてしまえば良いと甘い考えをしていたのだが、さすが悪友。考えることはいっしょか・・・。

吹雪の札幌、時計台前。男二人一文無し

宿をとるどころか、電車に乗る金さえない俺たち。もちろんこのままでは東京に帰ることさえできない。本州内ならば、歩いていればいつかは東京に着くのだが、ここは北海道。さすがに津軽海峡を自力で渡るのは・・・。
途方にくれながらも明かりを求めて歩くうちに、いつの間にか有名な夜の繁華街、ススキノへ。こんな時でも、ネオンの光に吸い寄せられてしまうのは俺達の宿命か。甘い誘惑あふれるこの街だが、金のない今の俺達には何の意味もない。けっきょくたどり着いたのは、なぜかススキノのど真ん中にぽつんと存在していた普通のバッティングセンター。ススキノ名物の、お酒片手にお姉ちゃんたちの投げてくる、言葉の変化球を狙いすましてホームラン・・・、という夜のバッティングセンターではないのが残念だが、風雪をしのげるだけでもありがたい・・・。疲れきった俺たちは、尾崎豊の歌にでてきそうなぐらい寄り添ってベンチに座り、体を休める。

どれほど時間がたったのだろうか。ボーっとしていると、怖そうな顔したおじちゃんが突然バット片手に話しかけてくる。旅先で、なぜかからまれる経験の多い俺たちがびびっていると、俺の相方にいきなりバットを差し出し、一言。
打ってみろ!
意味がわからず怖くなって、言われるがままゲージに入る元野球部の相方。
今でこそ夜のスラッガーに身を落としてしまっているが、つい一年前まではスポーツ刈りで白球を追いかけ額に汗していた本物。快音を響かす!ホームラン性のあたりを連発した相方が打ち終えてゲージを出てくると・・・。
「うちにこないか?ポジションどこがいい?」
ススキノのど真ん中で突然スカウト??

話を聞くと、おっちゃんは趣味で草野球チームの監督をやっていて、月末に試合があるらしい・・・。プータローで暇をもてあましている俺達。時間ならいくらでもあるのだが、今日の寝床さえない俺たちに、半月以上も先の試合日までの滞在費などあるはずもない。って言うよりもそれ以前に今は現状の対策を考えるのが第一。正直、草野球どころではない。
とりあえず事情を説明し、丁重に断ろうとすると・・・。
「何だ。お前ら家出か!金と泊まる所がないんだな。わかった、俺にまかせとけ。」
なぜか家出少年に勘違いされてしまったようだが、彼は懐から金色に輝くバブルな携帯を取り出しどこかへ電話をかけ、一言。
「おう、今日から若いの二人泊まるから。用意しとけ。」

何を用意されているのかも聞かされないまま、いかにもな感じの黒塗りのベンツで拉致されてきたのは、立派なマンションの一室。深夜3時もまわるというのに、丁重に迎えてくれたのは、とてもきれいな女性・・・。年は俺たちと同じぐらいに見えるから、このおじちゃんの娘さんか・・・。鳶が鷹を生むとは、まさにこのこと!
大きな部屋に通された俺たちに夢のような言葉が・・・。
「試合まで好きに使っていいぞ。試合で活躍したら、東京までの金も出してやる!」
これは夢か幻か・・・。それとも起きたらどこかに売られているのか・・・。あまりの展開にさすがの俺たちも困惑していたのだが、おっちゃんはマイペースに話を進める。
「明日また来るから、その時メシでも食いながら話ししようや。俺は今夜はかあちゃんとこ帰るから。あんま別宅いると怒られちまう。あっ、あとこれ俺の愛人だから、この女には手を出すなよ。出したら殺すから(笑)」
そう言って豪快に笑いながら出て行ってしまう彼。生まれて始めて目の当たりにする大人の関係・・・。「別宅」に「愛人」・・・。なんて素敵な言葉

この後、俺たち悪ガキ二人と、草野球チーム「893」の監督である豪快なおっちゃん、実は俺たちより年下だった大人の色気ムンムンの愛人4人という奇妙な組み合わせで、一ヶ月に渡ってススキノ伝説を築きあげることになるのだが、その武勇伝は、また別の機会に・・・。  
(後編に続く)

今月の教訓  「旅は道連れ世は情け」

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2007

2006

  • 「いつかのメリークリスマス」
  • 「ダメンの夏日記
    (NYビーチ編)」
  • 「サプライズ」
  • 「美人局」
  • 「YKK」
  • 「ダメンの諸国漫遊機
    (マイアミ編)」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―後編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (札幌ススキノ編)―前編―」
  • 「ダメンの日本漫遊記
    (チャリンコ旅行編)」
  • 2005

  • 「お漏らし」
  • 「メジャーの壁」
  •  
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